著作物の利用許諾について契約書を作成しようと思いますが、作成にあたって最低必要となる項目を教えてください。
著作物の利用許諾は、著作権譲渡とは異なり、著作権は元の著作権者に残り、移転しません。そのため、利用者から見ると、どの範囲までの利用許諾を得れば、自分の目的を達成することができるのかについて、十分に検討することが必要となります。
利用許諾に当たっては、一般的にその許諾範囲、期間、利用形態、使用料の支払について、契約期間について、著作者人格権の扱いについてなど、必要に応じて契約書に明記します。使用料については、消費税の扱いについても記載します。支払い方法には、一括払い、販売数量に基づく使用料などがあります。
利用許諾には、独占的な許諾と、非独占的な許諾のケースがあります。前者は、著作権者は、利用者以外に対しては、利用許諾を与えることができません。後者については、そうした制限がなく、著作権者は同じような許諾を他にも行うことができます。
また、利用許諾は、著作権者の了解なく、その権利を第三者に譲渡することはできません。したがって、もしそうした利用も考えられる場合には、その旨も契約書に記載しておくことが必要です。
著作権の侵害があった場合でも、その利用差し止め等を求めることができるのは、著作権者となります。そうした場合の対応についても、著作権者は、許諾を得た者と協力して対応するなどの規定を設けておく場合もあります。
こうしたことを念頭に、必要に応じて、次のような内容を含んだ契約書を作成するとよいでしょう。
- 利用の対象とする著作物の特定について
- 利用許諾の範囲の特定について
許諾の範囲は複製権などと範囲を定めるほか、印刷部数、日本国内の販売に限るなどの地域のなど - 独占的利用許諾を契約する場合は、その記載
- 著作者人格権について
- 保証条項について
利用許諾を与えた著作権者は、他人の著作権や肖像権を侵害していないとの保証について - 著作物の納入方法について
記録媒体によるなど - 利用に係る対価について
- 契約期間について権利譲渡について
- 利用許諾を受けたものが、第三者に許諾を行う場合の扱いに関する取り決め
- 契約終了時に在庫等がある場合の取り扱いについて
- 契約解除条項などについて
- 秘密保持条項について
- 裁判管轄について
著作物の譲渡契約書を作成しようと思いますが、作成に当たって最低必要となる項目を教えてください。
著作権の譲渡は、著作権者が譲渡人から譲受人移転しますから、新たな著作権者は、その著作物を自由に利用することができますし、他者に対して著作権の利用許諾をすることも自由です。一方、譲渡人は、その著作物についての権利がなくなるとともに、デザインなどの場合は、逆に同じような著作物を作成した場合には、譲受人から著作権の侵害を主張されることも想定しておく必要が生じる場合もあります。したがって、今後も同じような作品を制作するのであれば、譲渡に当たって、その点の了解を得ることも必要になります。
そうしたことを念頭に、最低でも以下のような項目について契約を行うことが必要です。
- 著作物の特定
- 譲渡を受ける権利を特定するのであれば、譲渡を受ける権利の特定。
- 譲渡期間を定めて、譲渡契約を締結するのであれば、その期間について。この場合、契約期間が終了した時点で著作権は、元の著作権者に戻ります。
- 法27条(翻訳権や翻案権、立体化権など)及び第28条(二次的著作物に関する原著作者の権利)の譲渡について
- 著作者人格権(公表権、氏名表示件、同一性保持権)については、もしその権利の不行使を求めるのであれば、その旨の記載を行います。また、著作者名の表示や、著作物の改変を行う場合で、著作者と著作権者が異なる場合がありますが、こうしたときには、著作者人格権については、著作者の了解を取る必要が生まれます。
- 譲渡に関する著作権登録について
- 対価について。対価が必要な場合には、その算定方法、支払方法、振込手数料などについての取り決めを行います。
- 場合によっては、この著作物の保証を行うと伴に、第三者からの著作権侵害などを訴えがあった場合の責任の保証について記載します。
知り合いのイラストレーターに広告宣伝用のイラストを作成してもらおうと思います。 どのような契約書を作成すればよいでしょうか。
下記の内容を決定し、契約書を作成します。
- 依頼内容の明示:イラストのテーマ、形状、納期、納入の方法
- イラストの利用:印刷による、ホームページによるなどについて
- 対価:金額、支払期限
- 著作権:帰属は依頼者に移転させるか否かについて
今まで研究してきた蝶の生態をまとめ、データと共に写真を掲載した本を自費出版したいと思います。 著作権に関連した出版社との契約についてお教えください。
出版に伴う契約には次のものがあります。
- 出版契約書(出版権の設定や著作権使用料等基本的な契約条項を記載)
- 出版物制作委託契約書
- 出版物販売委託契約書
自費出版が、商業出版に展開することもありますので、状況に応じて制作委託・販売委託等の契約書も交わすことがよいと思います。
契約書の詳細については著作権相談員である行政書士にご相談ください。
インターネットでの営業プログラムシステムを譲渡したいのですが、どういう契約書を作成すればいいでしょうか。特にハードの面とソフトの面があると思いますが、対象をどのように特定すればいいのでしょうか。
一般的な著作権譲渡契約に加え、次の点も考慮する必要があります。
- 譲渡対象がコンピュータプログラムシステムということで、そのシステムを利用できるハードウェアのシステム構成を特定する必要があります。ハードウェア最小限構成、必要性能
- 譲渡する対象の特定:プログラムの記録媒体は何か(CD-ROM他)、取扱説明書、プログラムリスト等の印刷物、その他提供する物件
- プログラムの複製の制限、保全用バックアップの複製以外の禁止
- プログラムにバグがあった場合の対応:瑕疵に当たるので、その保証条件(例えば3ヶ月の試用期間設定後引き渡し)
- 支援:導入時の技術指導、教育等の配慮
著作物の利用許諾を受ける場合と、著作権の譲渡を受ける場合とでは、著作物の利用について、どのような違いがあるのでしょうか。
著作権の利用許諾を得る契約と、譲渡を受ける契約については、その著作物をどのように使いたいのかによって、選択をすることがよいでしょう。ある1つの権利について、短期間利用できればよいのであれば、利用許諾に関して契約を行うことで問題はないでしょう。また、その著作権を各種の場面で使用したり、他社に使用の許諾を与えたりと、広範囲に利用するのであれば譲渡を受けた方が確実に利用できることになります。もちろん、これは著作権者が譲渡を許す場合で、しかもその譲渡の対価について、譲り受ける側が納得できるなどの条件を満たすことができなくては、譲渡には至らないでしょう。
さらに、著作権の譲渡がされても、著作者人格権は著作者に残っていますので、原則として著作物の利用の際に内容の改変等はできません(第59条)。
なお、「著作権は、その全部又は一部を譲渡することができる」(著作権法第61条第1項)とされていますので、例えば「上演権」のみの譲渡を受けるとの契約も可能です。
利用許諾についても、どのようなり利用を想定しているのか、どの著作権の権利を利用するのか、その範囲を確定して、限定的に契約を行うのが一般的です。利用者は許諾に係る利用方法や条件の範囲で著作物を利用できますが、これらの範囲を超えた利用はできません。たとえば、著作物の複製権(コピー)の利用許諾を受けている場合に、ホームページにもアップロードしたいとしても、それは別の権利です。具体的には、自動公衆送信の利用許諾が必要です。したがって、契約に当たっては、どの範囲の利用になるのかを十分に検討することが必要となります。
利用許諾契約や譲渡契約の相手方が本当に著作権を持っているかどうかを確認するにはどうしたらいいでしょうか。
著作権法では、著作権は、著作物の創作と同時に自動的に生じるとしていて方式主義を廃しています。公的に名義を公証する制度は採っていません。そのため、譲受人の危険を少しでも軽減するための措置としては、当該譲渡人が著作権者であるのかどうかについては、譲渡人の責任において証明することを求めたり、契約書に、著作権者でない場合の保証条項を加えるということが、実務の場では行われているようです。また、他人から著作権を譲り受けた場合には、その譲渡証書の提示を求めたり、対抗要件の登録が行われていることを確認したりすることができます。
知人の会社に頼まれイラストを作成しました。友人は、納品の際に「著作権については、すべて譲渡してもらいたい」と言うので、気軽に「いいよ」と返事をしました。契約書はいまだに交わしていません。著作権の譲渡について、特に契約書は不要なのでしょうか。
民法では、当事者双方の意思の合致があれば、口頭でも契約は成立するのが原則です。したがって、たとえ口約束であったとしても、著作権者は、著作権の譲渡の申し入れを承諾したことになります。契約書はその契約の確認(証拠)と第三者に対する対抗要件としての効力を持たすものであり、双方でこの契約に異議がなければ契約書を取り交わさなくてもよいことになります。
また「契約自由の原則」といって、公序良俗や、強行規定に反しない限り、契約内容などは両者により、自由に取り決めることができます。しかし、口約束では、あとになって「契約した内容とは違う」、「まだ契約していない」などの水掛け論になることも考えられますので、こうしたトラブルを避けるために文書による契約書が望ましいことになります。
なお、「著作権については、すべて譲渡してもらいたい」との契約内容でも、著作者人格権は著作者に残ります。このため、実務上では、契約書に「著作者人格権不行使」などの記載を行うこともあります。さらに、二次的著作物の創作などについては、それの譲渡について特掲されていない場合には、譲渡した側にその権利が残ると推定されます(法第27条、第28条)。
ある会社から、会社のシンボルとしてのキャラクターデザインを依頼され、その際に契約書を交わしました。著作権についてはすべてを譲渡するというものでした。譲渡代金として満足のいくものでしたので、迷わず署名しました。その後、キャラクターのフィギア人形を製作するとの話が出てきました。そのことについて、ある友人によると、フィギア人形の製作は、二次的著作物の創作に当たること、その点に関して契約書には、二次的著作物の創造を譲渡するとの記載がされているのかどうか、確認したほうがよいと言われました。フィギア人形の製作には、著作権法上、何か別の問題があるのでしょうか。
著作権譲渡契約は、利用許諾契約(ライセンス契約)と違い、一般的に契約の内容は譲受人に有利なものになっています。譲渡とは著作権の権利を「売却」するわけですから、今回の契約書の譲渡範囲がどのようになっているのか確認する必要があります。
すなわち、キャラクターデザインの立体化は、著作権法第27条(翻訳権、翻案権等)および第28条(二次的著作物利用に関する原作者の権利)に係りますので、この条項が明示されているかどうかがチェックポイントです。特に、この条項は、契約書に特記されていない場合は、譲渡の対象ではないと推定されます(著作権法第61条第2項)。
したがって、もしこの点が契約書に記載されていないのであれば、再度この権利の譲渡について契約書を交わす必要があるでしょう。