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知的財産権・知的資産

著作物等を無断で利用できる例外について

著作権者の許諾を得ずに著作物等を利用できる場合として、どのようなものがありますか?

著作権法では文化的所産の公正な利用を図るため、以下のように著作権者の許諾を得ずに、著作物等を利用できる例外規定を定めています。

私的使用のための複製(第30条)
  • 個人的または家庭内その他これに順ずる限られた範囲において使用するために、使用する者は無許諾で著作物を複製することができます。
  • なお、デジタル方式の録音録画機器等を用いて著作物を複製する場合には、著作権者に対し補償金の支払いが必要となります。
  • コピープロテクション等技術的保護手段の回避装置などを使って行う複製については、私的使用のための複製であっても著作権者の許諾が必要となります。
  • 著作権を侵害する自動公衆通信を受信してデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う場合は著作権者の許諾が必要となります。
図書館等における複製(第31条)

国会図書館及び政令(施行令1条の3)で認められた図書館等に限り、以下1~3の場合には営利を目的としない事業として一定の条件のもと、複製することができます

  1. 利用者に提供するための複製
  2. 図書館資料の保存のための複製
  3. 他の図書館の求めに応じて、絶版等で入手することが困難な図書館資料を提供する場合

なお、国立国会図書館においては原本の滅失、損傷、汚損を避けるため、必要と認められる範囲において著作物を記録媒体に記録することが出来ます。

引用(第32条)

公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他引用の目的上正当な範囲内で行われることを条件とし、自分の著作物に他人の著作物を引用して利用することができます(引用の場合、翻訳して利用もできます)。
また、国、地方公共団体、独立行政法人が広報のために発行した資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞、雑誌その他の刊行物に転載することができます(ただし、転載を禁ずる旨の表示がされている場合は許諾が必要です)。

教科用図書等への掲載(第33条)
教科用拡大図書等の作成のための複製等(第33条の2)

公表された著作物は、学校教育の目的上必要と認められる限度で教科用図書に掲載することができます。ただし、著作者へその旨を通知することと著作権者への一定の補償金の支払いが必要となります。この目的の範囲内であれば、翻訳、編曲、変形、翻案もできます。

教科書に掲載された著作物は、視覚障害、発達障害その他の障害により教科用図書に掲載された著作物を使用することが困難な児童または生徒の学習の用に供するため、当該教科書に用いられている文字、図形等を拡大して複製することができます。

学校教育番組の放送(第34条)

学校教育の目的上必要と認められる限度で学校向け放送番組において著作物を放送すること、また、その番組用の教材に著作物を掲載することができます。ただし、いずれの場合にも著作者への通知と著作権者への補償金の支払いが必要となります。翻訳、編曲、変形、翻案しての利用も可能です。

教育機関における複製(第35条)

学校教育を担任する者および授業を受ける者は、授業の過程で使用するために必要と認められる限度において、著作物を複製することができます。また、当該授業が行われる場所以外の場所において当該授業を同時に受ける者に対して、公衆送信を行うことができます。ただし、著作権者に経済的不利益を与えるおそれがある場合を除きます。複製が認められる範囲であれば、翻訳、編曲、変形、翻案もできます。

試験問題としての複製(第36条)

入学試験や採用試験などの問題として著作物を複製し、または公衆送信(放送または有線放送を除き、自動公衆送信の場合にあっては送信可能化を含む)を行うことができます。営利目的のための利用(模擬試験など)は、前もっての許諾は不要なものの、著作権者への補償金の支払いが必要となります。翻訳しての利用もできます。

視聴覚障害者等のための複製等(第37条)

公表された著作物は点字によって複製することができるほか、点字データにより保存したり、パソコン・ネットワークによって送信したりすることができます。また、視覚障害者と農福祉に関する事業を行うもので政令で定めるものについては、もっぱら視聴覚障害者向けの貸出し用として著作物を録音し、自動公衆送信することができます。翻訳しての利用も可能です。

聴覚障害者等のための複製等(第37条の2)

聴覚障害者の福祉に関する事業を行う者で以下の利用区分に応じて政令で定めるものは、公表された著作物であっては、必要と認められる範囲において利用を行うことが出来ます。

  1. 当該聴覚著作物に関わる音声について、これを文字にすることその他、複製し又は自動公衆送信を行うこと
  2. 聴覚障害者等向けの貸し出し用に複製すること
営利を目的としない上演等(第38条)
  1. 営利を目的とせず、聴衆・観客から料金を受けない場合は、公表された著作物を上演・ 演奏・上映・口述することができます。ただし、出演者などに報酬を支払う場合は認められません。
  2. 営利を目的とせず、聴衆・観客から料金を受けない場合は、放送される著作物をそのまま有線放送し、または専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として、自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む)を行うことができます。
  3. 放送され、または有線放送される著作物(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む)は、営利を目的とせず、かつ、聴衆または観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達することができます。通常の家庭用受信装置を用いて行う場合も同様です。
  4. 公表された著作物(映画の著作物を除く)は、営利を目的とせず、かつ、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物(映画の著作物において複製されている著作物にあっては、当該映画の著作物の複製物を除く)の貸与により公衆に提供することができます。
  5. 映画フィルムその他の視聴覚資料を公衆の利用に供することを目的とする視聴覚教育施設その他の施設(営利を目的として設置されているものを除く)で政令で定めるもの及び聴覚障害者等の福祉に関する事業を行うもので37条の政令で定めるものは、公表された映画の著作物を、その複製物の貸与を受ける者から料金を受けない場合には、その複製物の貸与により頒布することができます。ただし、著作権者に補償金を支払うことが必要です。
時事問題に関する論説の転載等(第39条)

新聞紙または雑誌に掲載して発行された政治上、経済上または社会上の時事問題に関する論説(学術的な性質を有するものを除く)は、他の新聞紙もしくは雑誌に転載し、または放送し、もしくは有線放送し、もしくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む)を行うことができます。ただし、転載を禁ずる旨の表示がある場合は、この限りではありません。翻訳しての利用もできます。 (第43条)

政治上の演説等の利用 (第40条)
  1. 公開して行われた政治上の演説または陳述および裁判手続(行政庁の行う審判その他裁判に準ずる手続を含む)における公開の陳述は、同一の著作者のものを編集して利用する場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができます。
  2. 国もしくは地方公共団体の機関、独立行政法人または地方独立行政法人において行われた公開の演説または陳述は、報道の目的上正当と認められる場合には、新聞紙もしくは雑誌に掲載し、または放送し、もしくは有線放送し、もしくは当該放送を受信して同時に専ら当該放送に係る放送対象地域において受信されることを目的として自動公衆送信(送信可能化のうち、公衆の用に供されている電気通信回線に接続している自動公衆送信装置に情報を入力することによるものを含む)を行うことができます。翻訳しての利用、受信装置を用いての公の伝達もできます。
時事事件の報道のための利用(第41条)

写真、映画、放送その他の方法によって時事の事件を報道する場合には、当該事件を構成し、または当該事件の過程において見られ、もしくは聞かれる著作物は、報道の目的上正当な範囲内において、複製し、および当該事件の報道に伴って利用することができます。例えば、演奏会の報道をする際、その中で演奏される音楽などがこれに当たります。翻訳しての利用もできます。

裁判手続等における複製(第42条)
  1. 著作物は、裁判手続のために必要と認められる場合および立法または行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、複製することができます。ただし、当該著作物の種類および用途並びにその複製の部数および態様に照らし著作権者の利益を不当に害することとなる場合は、この限りではありません。翻訳しての利用もできます。
  2. 次に掲げる手続のために必要と認められる場合についても、上記1と同様です。
    • 行政庁の行う特許、意匠もしくは商標に関する審査、実用新案に関する技術的な評価または国際出願に関する国際調査もしくは国際予備審査に関する手続
    • 行政庁もしくは独立行政法人の行う薬事に関する審査もしくは調査または行政庁もしくは独立行政法人に対する薬事に関する報告に関する手続
行政機関情報公開法等による開示のための利用(第42条の2)

行政機関の長、独立行政法人等または地方公共団体の機関もしくは地方独立行政法人は、行政機関情報公開法、独立行政法人等情報公開法または情報公開条例の規定により著作物を公衆に提供し、または提示することを目的とする場合には、開示するために必要と認められる限度において、当該著作物を利用することができます。

放送事業者等による一時的固定(第44条)

放送事業者または有線放送事業者は、自己の放送のために、自己の手段または当該著作物を同じく放送することができる他の放送事業者の手段により、一時的に録音し、または録画することができます。

美術の著作物等の原作品の所有者による展示(第45条)

美術の著作物もしくは写真の著作物の原作品の所有者またはその同意を得た者は、これらの著作物をその原作品により公に展示することができます。

公開の美術の著作物等の利用(第46条)

美術の著作物でその原作品が街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所に恒常的に設置されているものまたは建築の著作物は、次に掲げる場合を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができます。

  1. 彫刻を増製し、またはその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
  2. 建築の著作物を建築により複製し、またはその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
  3. 街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
  4. 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、またはその複製物を販売する場合
美術の著作物等の展示に伴う複製(第47条)

美術の著作物または写真の著作物の原作品を公に展示する者は、観覧者のためにこれらの著作物の解説または紹介をすることを目的とする小冊子にこれらの著作物を掲載することができます。

美術の著作物等の譲渡等の申出に伴う複製等(第47条の2)

美術の著作物又は写真の著作物の原作品又は複製物の所有者その他のこれらの譲渡又は貸与の権原を有する者は、著作権者の譲渡権又は貸与権を害することなくその原作品又は副生物を譲渡するときは、譲渡等の申出の用に供するため、これらの著作物の複製又は公衆通信を行うことができます。

プログラムの著作物の複製物の所有者による複製等(第47条の3)

プログラムの著作物の複製物の所有者は、自ら当該著作物を電子計算機において利用するために必要と認められる限度において、当該著作物の複製または翻案をすることができます。

保守、修理等のための一時的複製(第47条の4)

記録媒体内蔵複製機器の保守・修理を行う場合、その内蔵記録媒体に記録されている著作物は、必要と認められる限度において、当該内蔵記録媒体以外の記録媒体に一時的に記録し、および当該保守または修理の後に、当該内蔵記録媒体に記録することができます。

送信の障害防止等のための複製(第47条の5)

自動公衆送信装置を他人の送信の用に供することを業として行う者は、自動公衆送信装置の故障等による送信の障害を防止すること若しくはその記録媒体に記録された複製物が滅失若しくは毀損をした場合の復旧の用に供すること又は自動公衆送信を中継するための送信を効率的に行うこと等の目的上必要と認められる限度において、送信可能化等がされる著作物を記録媒体に記録することができます。

送信可能化された情報の送信元識別符号の検索等のため複製等(第47条の6)

送信可能化された情報に係わる送信元識別符号を公衆からの求めに応じて検索し、及びその結果を提供することを業として行う者は、必要と認められる限度において、送信可能化された著作物を記録媒体に記録し、及びその記録を用いて、送信元識別符号と併せて自動公衆送信することができます。

情報解析のための複製等(第47条の7)

著作物は、電子計算機による情報解析を行うために、必要と求められる限度において、記録媒体に記録することができます。

電子計算機における著作物の利用に伴う複製(第47条の8)

著作物は、電子計算機において著作物を利用する場合には、電子計算機による情報処理の過程において、その情報処理を円滑かつ効率的に行うために必要と認められる限度で、電子計算機の記録媒体に記録することができます。

私的使用のための複製(第30条)であれば、著作権者の了解を得る必要はないとされていますが、詳しく教えてください。

プライベート・ユースという言葉がありますが、著作権者の経済的な利益を害するおそれがないと考えられる態様のため認められた制限規定で、無許諾で著作物の複製ができます。「個人的に又は家庭内その他これに準ずる限られた範囲内において使用すること」とは、自分または家族、親密な友人間等、閉鎖的で強い個人的結合関係にあるグループでの使用を意味しています。企業内の内部資料として複製する場合は、小部数の複製であっても私的利用のための複製にはなりません。また、「その使用する者が複製することができる」となっていますので、コピー業者に複製を委託することは該当しません。なお、私的使用のための複製の際には、翻訳、編曲、変形、翻案もできます(著作権法第43条第1項)。
ただし、以下の場合は、「私的使用のための複製」には該当しません。

  1. 公衆の使用に供することを目的として設置されている自動複製機器(当分の間、文献複写機等、もっぱら文書または図画の複製のための機器を除く)を用いて複製するとき。
  2. 技術的保護手段の回避により可能となったまたはその結果に障害が生じないようになった複製。さらに、その事実を知りながら行う複製。
  3. 著作権を侵害する自動公衆送信(国外で行われる自動公衆送信であって、国内で行われたとしたならば著作権の侵害となるべきものを含む。)を受信して行うデジタル方式の録音又は録画を、その事実を知りながら行う複製

また、デジタル方式の録音録画機器等を用いて著作物を複製する場合には、著作権者に対し補償金の支払いが必要となりますが、録音録画機器や記録媒体等の購入時に、その対価に補償金を上乗せして支払うシステムになっています。

参照条文:著作権法第30条、第43条第1項

国や地方公共団体等が公表する広報資料、調査統計資料の類は、自由に複製することが可能でしょうか?

転載禁止表示がない限り、説明の材料として、新聞、雑誌などの刊行物に転載することができます。
著作権法第32条第2項に「国若しくは地方公共団体の機関、独立行政法人又は地方独立行政法人が一般に周知させることを目的として作成し、その著作の名義の下に公表する広報資料、調査統計資料、報告書その他これらに類する著作物は、説明の材料として新聞紙、雑誌その他の刊行物に転載することができる。ただし、これを禁止する旨の表示がある場合は、この限りでない」とあります。転載とは、複製の一形態であり、インターネットによる配信(公衆送信)は含まれていません。

参照条文:著作権法第32条

図書館での複写サービスには制限がありますか?

国会図書館及び政令で定める図書館等では、著作権者の了解なしに複製ができますが、条件が付されています。
記録その他の資料を公衆の利用に供することを目的とする図書館その他の施設で政令で定めるものにおいては、次に掲げる場合には、その営利を目的としない事業として、図書館等の図書、記録その他の資料を用いて著作物を複製することができます。

  1. 利用者の求めに応じて、調査研究の用に供するため、既に公表されている著作物の一部分(発行後相当期間を経過した定期刊行物(既に次号が発行されている雑誌等)に掲載された個々の著作物にあっては、その全部)を、一人につき一部提供する場合
  2. 図書館資料の保存のために必要がある場合
  3. 他の図書館の求めに応じ、絶版その他これに準ずる理由により一般に入手することが困難な図書館資料の複製物を提供する場合
  4. 国立国会図書館においては、図書館資料の滅失、損傷又は汚損を避けるため、原本に代えて公衆の利用に供するための、必要と認めらる限度において、記録媒体に記録することができます。

参照条文:著作権法第31条

引用する場合には、どのような点に注意すればよいのでしょうか?

引用するには、以下のように一定の条件を満たす必要があります。
著作権法第32条第1項では、「公表された著作物は、引用して利用することができる。この場合において、その引用は、公正な慣行に合致するものであり、かつ、報道、批評、研究その他の引用の目的上正当な範囲内で行なわれるものでなければならない」と定められていますが、最高裁判例など多数の判例によって、一定の判断基準が示されています。
判例で示されている要件

  1. 公正な慣行に合致すること
  2. 他人の著作物を引用する必然性があること
  3. 引用部分と自分の著作物とが区別されていること
  4. 自分の著作物を主とし、引用部分を従とすること
  5. 出所が明示されていること

なお、引用に際して、翻訳して利用することも許されます。

参照条文:著作権法第32条第1項、第43条第2項

市販されている問題集の一部をコピーして授業の教材として使っていますが、問題はありませんか?

授業で使用するために問題集の一部を複製して教材に使うことは、著作権者の許諾が必要と考えられます。
著作物を利用(複製)する場合には、その都度、著作権者の許諾を得ることが原則です(第21条)。しかし、これをどのような場合でも貫くことは、文化的所産である著作物の公正で円滑な利用を妨げることになり、文化の発展に寄与するという著作権制度の趣旨に反することになりかねません。 そこで、一定の場合には、著作権者の許諾を得ることなく複製できるものとされています。学校などの授業で使用する場合も、これに含まれます(第35条1項)。ただし、次のように厳格な条件を満たさなければなりません。

  1. 学校その他の教育機関(営利を目的として設置されているものを除く)における授業であること
    学校には、小学校、中学校、高等学校、大学、高等専門学校のほか専修学校や各種学校なども含まれます。その他の教育機関としては、公民館や青年の家などの社会教育施設、教育センターのような教員研修施設や職業訓練所といった職業訓練施設など継続的に教育事業を行っている施設が挙げられます。私塾は営利を目的とするものであるので、ここでいう教育機関には入りません。
  2. 教育を担任する者およびその授業を受ける者が複製すること
    複製を行うことができる者は、現場の先生および授業を受ける学生、生徒、児童等です。したがって、教育委員会が各学校に配布するために資料等を複製するには許諾が必要です。
  3. 授業の過程における使用に供することを目的とすること
    授業用に複製する場合に限られ、参考資料として全校生徒に配布することは許されません。なお、特別活動である運動会等の学校行事や、必修のクラブ活動において使用することも含まれます。
  4. 必要と認められる限度であること
    必要部数を上回る部数を複製したり、複製する必要のない部分までを複製することは認められていません。
  5. 公表された著作物であること
  6. 著作物の種類および用途並びにその複製の部数および態様に照らし、著作権者の利益を不当に害さないこと

ところで、問題集の場合は、元来、教育の過程において生徒たちの利用を目的として販売されている出版物ですから、多部数複製して配布すると、生徒の人数分売れるはずのものが一部しか売れなくなってしまい、著作権者の利益を損なってしまいます。
したがって、本問の場合は6の条件を満たさず、著作権者の許諾なしに複製することはできないものと考えられます。

参照条文:著作権法第21条、第35条1項

生徒が授業の発表資料として、インターネットからダウンロード・印刷した文章を利用する場合、著作権上の問題はありますか?また、その発表資料を教育委員会が編纂して、他の学校の副教材とすることは可能でしょうか?

教育を担任する者およびその授業を受けるものが複製(ダウンロード・印刷)する場合には、著作権者の許諾は不要です。しかし、教育委員会が行う場合には、著作権者の許諾が必要です。
学校などで授業に使用する場合には、一定の厳格なる条件を満たした上で、著作権者の許諾なく著作物を複製することができます(第35条1項。条件については、Q「引用する場合には、どのような点に注意すればよいのでしょうか?」参照)。
生徒が授業の発表資料としてインターネットからダウンロード・印刷した文章を利用する場合は、著作権法第35条1項の条件を全て満たしており、著作権者の許諾は必要ありません。
しかし、教育委員会は、ここでいう「教育を担任する者」に該当しませんので、著作権者から許諾を受ける必要があります。

参照条文:著作権法第21条、第35条第1項

大学の入試問題に詩や論文、小説などを利用する場合、許諾は必要でしょうか?また、当大学では過去10年分の入試問題を編纂し、入試問題解説集を作成しようと企画しています。その際、著作権法上の問題はありますか?

大学の入試問題で小説等を複製する場合には、著作権者の許諾を得る必要はありませんが、入試問題を編纂し問題解説集を作成する場合には、著作権者の許諾が必要になると考えられます。
著作物を利用(複製)する場合には、その都度、著作権者の許諾を得ることが原則です(第21条)。しかし、これをどのような場合でも貫くことは、文化的所産である著作物の公正で円滑な利用を妨げることになり、文化の発展に寄与するという著作権制度の趣旨に反することになりかねません。
そこで、一定の場合には、著作権者の許諾を得ることなく複製できるものとされています。試験問題としての複製(または公衆送信)もこれに該当し(第36条)、入学試験や学校のテスト、入社試験などの選抜選考試験の問題として、公表された著作物を著作権者の許諾なしに複製することが認められています(第36条第1項)。これは、試験問題として複製する場合に事前に著作権者の許諾を得ることが実際上困難であり、試験の秘密性が確保できないおそれがあるためです。
しかし、著作権法第36条が適用されるのは、秘密性を必要とする試験問題そのものとしての複製または公衆送信ですから、入試問題を編纂し問題解説集を作成する場合には、原則どおり著作権者の許諾が必要となります。また、編纂に当たっては、著作者人格権(同一性保持権)の侵害とならないよう注意する必要があります。

参照条文:著作権法第21条、第36条

ボランティア団体であっても著作物を点字により複製することができるとされていますが、点字データをインターネットで配信するには許諾が必要でしょうか?また、視覚障害者向けの貸し出し用として録音図書を作成したいと考えていますが、許諾は必要ですか?

誰でも営利・非営利関係なく著作権者の許諾なしに、公表された著作物を点字により複製することができます。さらに、自由に点字データをインターネット等で配信することもできます。また、視覚障害者等の福祉に関する事業を行う者で、政令で定めるものは、原則として、専ら視覚障害者等向けに、必要の限度において、音声等の利用できる方式で複製や自動公衆送信(送信可能化を含む)を行うことができます。
著作物を複製する場合には、著作権者の許諾を得ることが原則です(第21条)。しかし、著作権法37条においては、視覚障害者の福祉を増進する目的から著作権は制限され、公表された著作物について、点字による複製を認めるとともに、点字データによる著作物の保存およびコンピュータ・ネットワークを通じた送信についても、無許諾で行うことができるとされています。これは、自由利用を認めても著作権者の利益を著しく害するものではないと考えられるからです。なお、外国語で書かれた作品については、日本語に翻訳し点字で複製することも許されています(第43条第1項第2号)。
また、視覚障害者その他の視覚による表現の認識に障害のある者の福祉に関する事業を行うもので、政令で定めるものは、公表された著作物であって、視覚によりその表現が認識される方式により公衆に提供、提示されているものについて、専ら視覚障害者等で視覚著作物を利用することが困難な者のために、必要と認められる限度において、視覚著作物に関する文字を音声にすることや、その他視覚障害者等が利用できる方式により、複製し、自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うことができます。ただし、その視覚著作物が、著作権者やその許諾を得た者、出版権の設定を受けた者により、当該方式による公衆への提供や提示が行われている場合は、この適用はありません(第37条第3項)。

参照条文:著作権法第21条、第37条、第43条第1項第2号、著作権法施行令第2条

ボランティア団体が聴覚障害者のためにインターネットによる「リアルタイム字幕送信サービス」を行う場合、著作権上の問題はありますか?

聴覚障害者等の福祉に関する事業を行う者で政令で定めるものに限り、聴覚障害者等のためにリアルタイム字幕送信サービスを行うことができます。
著作権法では、例外として一定の場合に著作権等を制限し、権利者に許諾を得ることなく著作物を利用できるとしています。これは、「文化の発展に寄与することを目的とする著作権制度の趣旨」に基づくもので、福祉の増進の観点から聴覚障害者等のための「リアルタイム字幕送信サービス」ついても規定が設けられています。
著作権法第37条の2では、聴覚障害者等の福祉に関する事業を行う者で、政令(施行令2条の2)で定めるものに限り、必要と認められる限度において、次に掲げる利用を行うことができますとして、「リアルタイム字幕送信サービス」等の行えるものを限定しています。ただし、著作権者又はその許諾を得た者、出版権の設定を受けた者が、その聴覚障害者等が利用するために必要な方式による公衆への提供又は提示が行われている場合は、この適用はありません。

  1. 聴覚著作物の音声を文字にすること、その他聴覚障害者等が利用するために必要な方式により、複製し、又は自動公衆送信(送信可能化を含む。)を行うこと。
  2. 専ら当該聴覚障害者等向けの貸出し用に複製すること
    政令(施行令2条の2)に基づき指定された事業者としては、日本障害者リハビリテーション協会、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、全日本聾唖連盟等があります。
    したがって、ボランテイア組織で福祉関係のサービスを行うものといえども、政令で定める施設の業務を担う場合を除き、原則に戻って著作権者の許諾が必要になるものと考えられます。

参照条文:著作権法第23条、第27条、第28条、第37条の2、著作権法施行令第2条の2

市民文化祭で、ある有名アーティストによるコンサートを開催します。アーティストに対しては実費ほか謝礼を支払いますが、入場料を無料とし、誰でも楽しめるものにしようと考えています。営利目的ではないので著作権の許諾はいらないものと考えますが、いかがでしょうか?

著作権の許諾が必要です。
許諾なしに音楽の演奏・歌唱が許されるのは、

  1. 非営利目的であること
  2. いかなる名目でも聴衆・観衆から料金を徴収しないこと
  3. 演ずる人に報酬を支払わないこと

、この三つの条件が完全に守られる場合に限られます。これらのうちどれか一つが欠けても認められません。設問のケースでは、アーティストに実費ほか謝礼が支払われていますから、3の条件から外れるため、著作権者の承諾が必要になります。

参照条文:第38条第1項

喫茶店を経営していますが、一般家庭用のテレビを用いて放送番組を店内のお客さんに見せています。著作権上、問題があるでしょうか?

一般的に著作権の問題はありません。
著作権法上、著作権者は著作権の一つである伝達権を有していますので、著作権者の許諾なしに、放送・有線放送等で公衆送信される著作物を受信装置を使って公に伝えることができないと定められています(第23条第2項)。
例えば、ターミナル駅周辺のビル側壁等に設置された大画面装置で放送番組を流すことが近年多くなりましたが、それがこのケースに該当します。
しかし、放送され、または有線放送される著作物(放送される著作物が自動公衆送信される場合の当該著作物を含む)は、営利を目的とせず、かつ、聴衆または観衆から料金を受けない場合には、受信装置を用いて公に伝達することができます。また、一般家庭用のテレビを用いて受信して客等に見せる場合も同様で、例え営利目的で使われている場合であっても、著作権者の許諾は必要ないことが定められています(第38条第3項)。

参照条文:著作権法第23条第2項、第38条第3項

行政機関において業務上の資料とするため、新聞記事をコピーして各担当者に配布しようと考えています。その場合、著作権者の許諾は必要でしょうか?また、それを一般市民にも配布したいのですが、問題はありますか?

行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、特例として著作権者の許諾は必要ありませんが、一般市民に配布する場合には許諾が必要となります。
著作物は裁判手続のために必要と認められる場合、および立法または行政の目的のために内部資料として必要と認められる場合には、その必要と認められる限度において、コピー(複製)することができます(第42条)。ただし、特段の目的もなく参考資料として複製することは、これに該当しません。著作権者からの許諾が不要となるのは、あくまでも内部資料として利用する場合に限定されており、一般市民への配布は著作権者からの許諾が必要となります。
ただし、新聞記事であっても、人事異動記事や死亡記事などは「事実の伝達にすぎない雑報及び時事の報道」として著作物には該当しません(第10条第2項)。

参照条文:著作権法第10条第2項、第42条

街路、公園等に設置されている彫刻や建築物を写真撮影する場合、許諾は必要でしょうか?また、それを写真集として販売することを企画していますが、問題はありますか?

原則として著作権者の許諾は必要ありません。ただし、彫刻など美術の著作物を写真集として販売する場合は許諾が必要となります。
街路や公園に設置されている彫刻や建築物は、風景の一部として写真撮影されることがしばしばあります。写真は複製の一種ですから、本来であれば彫刻家や建築家の許諾を得なければならないわけですが、それは極めて不便なことであり、また著作権者が権利を行使することも実際には困難です。このような事情から、著作権法では街路や公園その他一般公衆に解放されている屋外の場所に恒常的に設置されている美術の著作物(原作品に限る)、または建築物については、一定の例外を除き、いずれの方法によるかを問わず、利用することができると定めています(第46条)。写真撮影、ビデオ撮影、写生、放送などの利用も、原則として著作権者の許諾なしに行うことができます。
また、一定の例外には、

  1. 彫刻を増製し、又はその増製物の譲渡により公衆に提供する場合
  2. 建築の著作物を建築により複製し、又はその複製物の譲渡により公衆に提供する場合
  3. 街路、公園その他一般公衆に開放されている屋外の場所に恒常的に設置するために複製する場合
  4. 専ら美術の著作物の複製物の販売を目的として複製し、又はその複製物を販売する場合

があります。
美術の著作物を写真集として販売することを目的として写真撮影(複製)する場合は、4に該当し(第46条第4項)、著作権者の権利が及ぶため、許諾が必要となります(建築の著作物については規定されていません)。

参照条文:著作権法第46条、第46条第4項

ある画家の展覧会を行う予定ですが、その際、来場者のためのパンフレットに展示作品を掲載したいと考えています。著作権の問題はありますか?また、販売用の絵葉書に複製する場合、許諾が必要でしょうか?

利用目的によって許諾が必要か否か異なります。
美術作品の所有者や所有者から展示について同意を得ている者は、著作権者の許諾なしに、その作品を公に展示できるとともに(第45条第1項)、来場客のためにこれらの著作物の解説または紹介をすることを目的とするパンフレットなどの小冊子に展示作品を掲載することができます(第47条)。
しかし、その範囲を超える利用(販売を目的とする絵葉書に複製するなど)を行う場合には、著作権者の許諾が必要となります。

参照条文:著作権法第25条第1項、第47条

学術専門書を保有しています。部分的に複写して授業で使用しておりますが、今のうちにまるごと電子化して保存しようと、いわゆる″自炊″を考えています。これを使用して、紙に複写し、生徒に配布することは問題ありませんか?

個人所有の専門書の自炊については、とくに問題はありません。

自炊については、「私的利用」に当たり問題とはなりません。
教育現場での授業の一環として、必要と認められる限度において、また著作権者の利益を不当に害さないという制限の元に、複写して配布することも問題ありません。
(注:自炊:書物の背部分を裁断して、ページごとにスキャナーで読み取り、電子的ファイルとして保存すること)

アマチュア合唱団が市販の楽譜本からコピーをとり、練習や発表会に使っていますが、問題はありませんか?

合唱団の練習や発表会に配布して使うというのは、私的使用には該当しませんので、このコピーは違法となります。

コピー(複製)は、私的使用のための複製は「私的利用」に当たり認められていますが、設問の場合は、私的使用には該当しませんので、このコピーは違法です。
ただし、作曲家、作詞家の死後50年が経ってしまっているものは、原則として著作権が消滅していますので、自由にコピーをとることはできます。なお、新たな訳詩や編曲されて出版されたものは、その著作権に留意する必要があります。
市販の楽譜なら、正規のものを購入して使うのが利用する者の基本ルールです。

参照条文 著作権法第30条

美術品をインターネット販売等する場合には、その画像掲載を許諾なく行えるとの事ですが、その内容を教えてください。

ある一定の条件の下では、画像掲載が可能であるとの権利制限を認めています。

近年、インターネットオークションをはじめとする対面で行われない商品取引の形態が広く普及しています。こうした取引では、商品紹介に美術や写真の著作物の画像を掲載することが不可欠ですが、一方では、複製権や公衆送信権の侵害に当たる可能性が指摘されてきました。
このため、譲渡権等を侵害しないで美術品や写真の譲渡等を行うことができる場合には、その申出のための複製又は自動公衆送信をある一定の制限を定めたうえで権利者の許諾なしに行えることにしたのです。
すなわち、画像掲載が譲渡等を可能とするための便宜上の効果を超えて、正規の美術品等の市場を圧迫しないようにするため、ネット上に掲載された画像からの複製を防止するための技術的な手段を施すなど、著作権者の利益を不当に害しないための措置として政令で定めるもの(画像を一定以下の大きさ・精度にすること等)を講じている場合に限り、権利制限を認めることとされました。

参照条文 著作権法第47条の2、同施行令第7条の2、同規則第4条の2

音楽や映像のタイトル名でファイル共有ソフトのファイルを検索してダウンロードすることは違法にあたるのでしょうか?

著作権者に無断でアップロードされたのが事実であれば、「その事実を知りながら行うダウンロード」にあたる可能性があります。

著作権等を侵害する自動公衆送信を受信して行うデジタル方式の録音または録画を、その事実(=著作権等を侵害する自動公衆送信であること)を知りながら行う場合は、私的使用目的の複製にかかる権利制限の対象外とされました。平成24年の改正では、違法ダウンロード行為に対し、2年以下の懲役若しくは200万円以下の罰金が科されることになりました(併科可)。

参照条文 著作権法第30条第1項第3号

旅行の際に撮ってもらった私の写真の背景に、撮影場所であるテーマパークのキャラクターが写っています。この写真を私が開設するブログやSNSサイトに掲載することに問題はありますか?

写真の撮影だけでなく、録音・録画などを行った際、本来の記録対象(この場合の『私』)以外に記録されてしまった著作物(いわゆる「写り込み」等。この場合のキャラクター)を「付随対象著作物」といいます。

付随対象著作物については、

  • 本来の記録の対象事物や音から分離することが困難であること。
  • 記録のうえでの軽微な構成部分であること。
  • 著作権者の利益を不当に害することにならないもの。

などの場合は、著作権者の許諾なく、複製・翻案・利用することができます。

ただし、例えば「軽微な構成部分」がどの程度までを指すものかについてなどのほか、あらかじめ基準として定められるものではない点が問題となる可能性もあるため、個別の態様・事案によっては、司法判断等が必要とされる場合もあります。

参照条文 著作権法第30条の2

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