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遺言・相続

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自筆証書遺言と公正証書遺言のメリット・デメリットを教えてください。

「自筆証書遺言」は、特段の費用を掛けることなく遺言者が一人で手軽に作成することができ、書き直すことも自由であるというメリットがある反面、所定の方式を守らないと無効となってしまうおそれがあり、また遺言者の死後、「検認」という家庭裁判所の手続を経ないと、事実上遺言内容を実現できないというデメリットがあります。
一方、「公正証書遺言」は、公務員である公証人が作成に関与するため、方式や内容において適切な遺言を作成でき、また偽造変造のおそれがないために検認が不要であるというメリットがある反面、所定の公証人手数料が掛かる、戸籍謄本や印鑑証明書の提出が求められる、証人2名が必要である等、作成に若干手間と費用を要する点、また、作成された公正証書遺言を遺言者自身の手で加除訂正することはできず、改めて公正証書を作成し直さなければならない点はデメリットであるといえるでしょう(公正証書遺言を、後に作成する自筆証書遺言で取り消すことは可能です)。

自筆証書遺言の「所定の方式」とは何でしょうか。

1.遺言の全文、2.作成日付、3.遺言者の氏名、の全部について遺言者が自書し、押印をすることです。これらの方式が1つでも欠けるとせっかく遺言書を作成しても無効となりますので、注意が必要です。

自筆証書遺言と公正証書遺言のどちらを選べばいいのでしょうか。

あくまでも一般論ですが、頻繁に遺言の内容を書き換える可能性があるならば、手間とコストを考え、まずは自筆証書遺言で作成されることをおすすめします。
一方、遺言の内容に変更が見込まれず、また相続財産の分け方を巡って相続人間でのトラブルが予想される、というような場合には、遺言内容のスムーズな実現のために、公正証書遺言を作成されるとよいでしょう。

家庭裁判所の検認手続について教えてください。

検認とは、公正証書遺言以外の遺言書について、その形式的な状態を確認し、偽造変造を防止するための手続です。
遺言書の保管者や遺言書を発見した相続人は、相続の開始を知った後、遅滞なくこれを家庭裁判所に提出して、その検認を請求しなければなりません。

  • 検認の申立先
    1. 遺言者の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
  • 申立てに必要な費用
    1. 遺言書(封書の場合は封書)1通につき収入印紙800円
    2. 連絡用の郵便切手(申立てされる家庭裁判所へ確認してください。)
  • 申立てに必要な書類
    1. 申立書1通
    2. 申立人,相続人全員の戸籍 各1通
    3. 遺言者の出生時から死亡までの戸籍(除籍、改製原戸籍を含む) 各1通
    4. 遺言書の写し(遺言書が開封されている場合)
      ※事案によっては,このほかの資料の提出を求められることがあります。

詳細は、裁判所のウェブサイト内の「裁判手続の案内」のコーナーから、「家事事件」→「相続に関する審判」→「遺言書の検認」のリンクをたどると見ることができます。

公正証書遺言が作成されているかどうかを調べる方法について教えてください。

公正証書遺言の場合、平成元年(東京都内は昭和56年)以降に作成されたものであれば、日本公証人連合会において、公正証書遺言を作成した公証役場名・公証人名・遺言者名・作成年月日等をコンピュータで管理していますので、どこの公証役場を通じても照会が可能です。
この照会をしようとする場合、遺言者の死亡の事実や、照会者が遺言者の利害関係人であることを証明するため、遺言者の戸籍謄本等を持参する必要があるほか、照会者の本人確認のための書類(運転免許証等)が必要となります。なお、照会手数料は無料です。

被相続人の戸籍はどこに請求したらよいのでしょう?

被相続人の戸籍は、被相続人の本籍地の市役所(区役所)が管理していますので、そちらに請求してください。
また、本籍地は、住所地とは異なりますので、注意が必要です。本籍地を知るには、被相続人の住民票(除かれた住民票)を「本籍地記載」と指定して取得する方法や、運転免許証(ICカード化される以前のもの)の本籍欄を見る方法があります。
なお、戸籍取得に要する費用(1通当たり)は、以下の通りです。

  1. 戸籍謄本:450円
  2. 除籍謄本:750円
  3. 改製原戸籍謄本:750円
除籍、改製原戸籍とは何ですか?

除籍謄本とは、戸籍の構成員全員が死亡や結婚によってその戸籍から除かれたことにより、又は戸籍全体が他の本籍地(異なる市町村)に移ったことにより、「除籍簿」に綴られることになった戸籍をいいます。つまり、誰もいなくなった「戸籍の抜け殻」のようなものです。
これに対し、改正原戸籍とは、法令によって戸籍を新たな様式に作り直した際、作り直す前の古い戸籍をいいます。
除籍、改製原戸籍のいずれも、相続人を確定するためには必要不可欠なものですから、取得し忘れがないようにしましょう。

被相続人の戸籍を取得して金融機関に提出しましたが、「これでは足りない」と言われました。なぜでしょうか?

相続手続に必要な被相続人の戸籍は、相続人の範囲を確定するという目的のため、「出生~死亡までの間」「連続して」取得する必要があります。つまり、結婚を機に戸籍を移った、引越しなどの時に戸籍も住所地に合わせる形で移した、といった事情があるような場合、それら従前の戸籍もすべて遡って取得することになるのです。
そのため、事情によっては、いくつもの市町村に戸籍を請求しなければならない場合もあり得ます。

被相続人名義の土地の具体的な所在地が分かりません。どうしたらよいですか?

所在地の市町村名までが判明しているのであれば、その市町村の資産税課(東京23区は都税事務所)に「名寄帳(固定資産課税台帳)」の閲覧を申請することで、被相続人がその市町村内に有している不動産の一覧を見ることができます。
閲覧者が相続人である場合には、相続人であることの証明として、被相続人との関係を示す戸籍謄本が必要であるほか、閲覧者自身の本人確認書類(運転免許証等)が必要となります。

相続人の中に行方が分からない者がいるため、遺産分割の話し合い(遺産分割協議)ができません。どうすればよいですか?

家庭裁判所に対して「不在者財産管理人」の選任を申立てるという方法があります。不在者財産管理人が選任された場合、その者に不在者に代わって遺産分割協議に参加してもらうことができます。

相続人の中に、海外在住の者がいます。住民票が日本にないため、印鑑登録もできないのですが、このような者はどのように遺産分割協議書に実印を押すのですか?

在外者の場合、国内に住民登録されていないため、印鑑登録ができません。このように実印+印鑑証明というパターンが使えない場合の本人確認には、署名証明(サイン証明)という方法があります。
証明を受ける本人が在外公館に遺産分割協議書を持参し、領事の面前でそれに署名・拇印押捺をすることで、領事が本人の署名であることを証明し、証明文を遺産分割協議書に合綴してくれます。
このように署名証明が付された遺産分割協議書により、財産の名義変更等の相続手続を進めることができます。

遺産分割の方法にはどのようなものがありますか?

遺産分割の方法には、大きく分けて次の5つがあります。

1、現物分割

「不動産は妻に」「○○銀行△△支店の預金は長男に」といった形で、個々の相続財産についてそのまま取得者に取得させる分割方法です。相続財産の帰属が明確で分かりやすいというメリットがある反面、法定相続分どおりに分けることが難しいというデメリットがあります。

2、代償分割

一部の相続人が自分の法定相続分を超えて相続財産を取得し、他の相続人には超過分の代償としての金銭(代償金)を支払う、という分割方法です。事業用の資産や自社株式など、相続人間で分割して取得するのに適さない相続財産がある場合に有効な方法ですが、代償金を支払う相続人に金銭的支払能力がなければ採ることができない、というデメリットがあります。

3、代物分割

一部の相続人が自分の法定相続分を超えて相続財産を取得し、他の相続人には超過分の代償として自己の不動産や株式等の現物財産(代物)を移転する、という分割方法です。代償分割と異なり、金銭的な支払能力が要求されないというメリットはありますが、代物を移転する際に代物の時価相当額に対して譲渡所得税が課税されるというデメリットがあります。

4、換価分割

相続財産を売却するなどして金銭に換え、その金銭を相続人間で分割する分割方法です。法定相続分どおりにきちんと分割できるというメリットがある反面、売却に時間と費用がかかり、売却益に対して譲渡所得税の課税があること、また相続財産の現物が相続人の手元に残らないため、不動産を利用し続けたいような場合には採ることができない、というデメリットがあります。

5、共有分割

相続財産(主に不動産)を共有という形で相続する分割方法です。相続財産の現物を相続人の手元に残すことができる、法定相続分を正確に反映させることができる、というメリットがある反面、共有した相続人が将来亡くなった場合(2次相続)に共有者が増えて権利関係が複雑化したり、共有物を処分しづらくなったりする可能性がある、というデメリットがあります。

いずれの分割方法を採るとしても、メリットとデメリットがありますので、専門家のアドバイスを参考にするなど、慎重に判断する必要があります。

相続の手続がすべて完了するには、どのくらいの時間がかかりますか?

相続人の数や相続財産の種類の多少、金融機関等の対応のスピード、遺産分割協議の進行の状況等、様々な事情が関係してくるため、残念ながら一概に申し上げることはできません。ただ、あくまでも目安ということですが、財産が比較的少なく、全ての手続が円滑に進んだ場合であっても、相続人の確定から相続財産の名義変更手続完了までは少なくともおよそ6ヶ月程度はかかると考えられます。

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