2019年
登録支援機関の職員による申請取次制度拡張への反対声明
2019年3月1日
東京都行政書士会
会長 常住 豊
法務省は、「特定技能1号」に従事する外国人の受入れ機関が支援計画基準を満たせない場合の措置として、受入れ機関との契約に基づき、登録支援機関が受入支援計画実施受託業務を行えることに加え、入国管理局への本人又は代理人の出頭を免じる各種申請取次を「業」とする者として弁護士等の国家資格者に限定している現行の申請取次制度を登録支援機関の職員まで拡張する予定である。
多くの人材派遣会社や通信事業者等が登録支援機関に参入し、当該機関の職員にまでも申請取次制度を拡張することは、深刻な人手不足の分野における特定技能外国人受入れ機関の職員が出入国在留管理庁(本年4月)への申請書を作成するとは到底考えられず、登録支援機関が官公署へ提出する申請書作成業務までも含めた役務を提供するものと考えるのが自然の道理であろう。これは、弁護士法及び行政書士法違反行為を助長することにつながるものと危惧せざるを得ない。
現在の出入国管理行政を担う入国管理局の職員は、限られた予算と人員で、増加する外国人の出入国在留諸申請の審査業務に多忙を極めている。登録支援機関の職員による出入国在留管理局への申請取次ぎを認めることは、熾烈な価格競争に伴って申請取次者の質の低下を招来し、ひいては出入国在留諸申請に対する審査の遅延を引き起こすことが懸念される。
これまで「業」として入国管理局への申請取次を弁護士・行政書士の資格に加えて、地方入国管理局長に届出た国家資格者に限定した「出入国管理及び難民認定法施行規則」の趣旨は、高度な出入国管理及び難民認定法に精通する法的素養を担保とし、本人出頭を原則免じる措置として本人又は代理人から対面で事情を十分に確認することで、出入国管理行政の簡素化を図ることを目的に導入されたはずである。
仮に登録支援機関の職員にまで、特定技能受入れ機関に所属する外国人についての各種申請取次制度を拡張するのであれば、従来の弁護士及び行政書士を含む学校取次・企業取次・技能実習管理団体職員等のすべての申請取次制度を抜本的に見直す必要がある。
出入国在留管理庁への各種申請取次ぎ制度を登録支援機関の職員にまで拡張して認めることは、出入国管理及び難民認定法に精通しないままに申請取次することが予想され、これにより,出入国在留管理行政の混乱を招来して国益を損ねる恐れが極めて大きいと懸念される。かかる観点から、登録支援機関職員への申請取次拡張を容認しがたく、各関係機関におかれては、本件に関し熟慮いただき慎重なるご審議を要望する。